電離放射線（X線、γ線など）はDNAに様々な傷を発生させます。DNAに傷ができると細胞は、細胞周期の進行をいったん止めて、DNAの傷を修復します。この細胞周期停止とDNA損傷修復をうまく協調させる仕組みは、DNA損傷チェックポイント機構と呼ばれています。電離放射線によってできるDNAの傷の中で特に重大なのはDNA二重鎖切断です。なぜならDNA二重鎖切断は、遺伝子の欠損や再構成、染色体転座の原因になったりするからです。私たちは、代表的な癌抑制蛋白質であるp53と結合する蛋白質を発見し、53BP1と命名しました。もともと核内にひろく分布している53BP1は、DNA二重鎖切断が発生すると速やかに移動してDNA二重鎖切断部位に集積します。このことから53BP1は、DNA二重鎖切断に対するチェックポイント、あるいはDNA二重鎖切断の修復に関与していることが予想されます。私たちは、DNA二重鎖切断に対する53BP1の機能を明らかにすることを目標に、研究を続けています。